Period-Mathematics

「解の巡回」にトドメをさす!~ガロア理論による背景の完全解明~

まず次の問題を見てもらいたい。

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2017年の早稲田大学の入試問題である。解答は適当に検索すると例えばhttp://nonoishi.web.fc2.com/entexam/nyuusi17-1.pdfが見つかる。そこにはF(x) = x^3+x^2-2x-1、その根は2\cos(2\pi/7),2\cos(4\pi/7),2\cos(6\pi/7)と書いてある。

 

 

この特別な多項式F(x)を「巡回多項式」、G(x)をその「巡回関数」と呼ぶことにするならば、この問題は多項式F(x)が巡回多項式G(x)がその巡回関数であることを主張していると言える。

 

この気持ちに沿うように「巡回多項式」、「巡回関数」を定義してみよう。

 

 

 

[定義]

f\in \mathbb{Q} [x]\alpha =\alpha _0,\cdots,\alpha _{n-1} を解に持つ$n$次の有理数係数多項式とする。ここでfが巡回多項式であるとは次が成り立つ事をいう:

あるp(x)\in \mathbb{Q} [x]があって\alpha _i=p^{(i)} (\alpha )\,(i=0,\cdots ,n-1)

このとき$p$を$f$の巡回関数という。

 

 

ここでp^{(i)}pi回合成した関数を表している(ただし$p^(0)(x):=x$)。

 

注意:$p$は唯一つに定まるとは一言も言っていない。

 

さて、もし x^3+x^2-2x-1という多項式だけ見せられて、これが巡回多項式であること、そして巡回関数は何であるかを求めることは出来るのだろうか?

 

まずは前者から解決しよう。いきなりであるが次がこのテーマの主定理であり、この話題に決着をつけるものである。

 

以下\mathbb{Q}_f多項式f\mathbb{Q}上の最小分解体を表す。*1

 

[主定理]
f\in \mathbb{Q} [x]\alpha =\alpha _0,\cdots,\alpha _{n-1} を解に持つ既約n多項式とする。このとき以下が成り立つ

\mathbb{Q}_f/\mathbb{Q} n次巡回拡大\iff fは巡回多項式

 

巡回拡大とはその拡大のガロア群が巡回群であるということである。つまりこの問題の構造はガロア理論によって記述されるものなのである。 またここでn素数のときにはもっと特殊な状況が起こる(後で証明する)

 

[系]
f\in \mathbb{Q} [x]\alpha =\alpha _0,\cdots,\alpha _{p-1} を解に持つ既約p多項式とする(p素数)。このとき以下は同値である     
(a) {\rm Gal} (\mathbb{Q}_f/\mathbb{Q} )\cong \mathbb{Z}/p\mathbb{Z}
(b) fは巡回多項式
(c) fのある根\alphaを用いて\mathbb{Q}_f=\mathbb{Q}(\alpha)と書ける

 ここで \mathbb{Z}/p\mathbb{Z}p巡回群のことである。

これにより、例えば

代数体上の多項式の因数分解 - Period-Mathematics

で挙げられているf(x)=x^5+x^4-4x^3-3x^2+3x+1はその因数分解の形から条件(c)を満たしていることがわかるので、巡回多項式であることがわかる(後で確認する)*2

 

主な想定読者層は中高生や数学が専門でない(なかった)方、としているので証明や説明は懇切丁寧に書いた。ただ、ガロア理論についてしっかりした知識がない場合、ちゃんとした本を一冊傍らに置いておくことを強くお勧めする。後述するが、本稿ではよく知られた事実などを石井俊全『ガロア理論の頂を踏む』から引用したりしているので、例えばこの本を用意しておけば十分である。

 

本稿を通じてガロア理論ないし現代数学の大きな魅力である、計算の泥沼の上を優雅に飛んで行ってしまう感覚を味わえたら幸いである。

 

 目次

 

 主定理の証明(ここは飛ばして先に計算を楽しむこともできる)

主定理を示す前にいくつか補題などを用意する。いくつかよく知られた事実などは認めることにする。ただ一応出典は載せておいた方がいいと思ったのでここでは、最近人気のようである石井俊全『ガロア理論の頂を踏む』から引用することにする。その方が多分読者層にもあっているだろうし何よりこの本は全く省略がないので問題ない。以下断りなくページ数などを書いたらこの本についてのものとする。また説明も、高校生などを想定してかなりわかりやすくかみ砕いて説明したつもりである。

 

補題1
Wを有限次元ベクトル空間Vの部分空間とする。ここでWも有限次であり、{\rm dim}V={\rm dim}W\iff V=Wが成り立つ。(p.319 定理5.16)

 

補題2
n次既約多項式f\in \mathbb{Q} [x]の根\alpha による単拡大体\mathbb{Q} (\alpha )\mathbb{Q} 上のベクトル空間の基底として\bigl\{1,\alpha ,\alpha ^2,\cdots ,\alpha ^{n-1}\bigr\} が取れる。よって[\mathbb{Q} (\alpha ):\mathbb{Q}]=n(p.288 定理5.3 後半)

 

命題1
 |{\rm Gal} (\mathbb{Q}_f/\mathbb{Q} )|=[\mathbb{Q}_f:\mathbb{Q} ](p.377 定理5.28)

 

命題2
L \supset L' \supset \mathbb{Q}をそれぞれ\mathbb{Q}n,n'次拡大体とするとき、n=n' \iff L=L'

証明

\Leftarrow は仮定そのものであるので\Rightarrow を示せばよいが、拡大次数の定義を思い出せば補題1より直ちに従う。

証明終了

 

では主定理の証明に入る。もう一度主定理を述べておこう。

 

[主定理]
f\in \mathbb{Q} [x]\alpha =\alpha _0,\cdots,\alpha _{n-1} を解に持つ既約n多項式とする。このとき以下が成り立つ

\mathbb{Q}_f/\mathbb{Q} n次巡回拡大\iff あるp(x)\in \mathbb{Q} [x]があって\alpha _i=p^{(i)} (\alpha )\,(i=1,\cdots ,n)(つまりfは巡回多項式

証明 

\mathbb{Q}_f/\mathbb{Q} n次巡回拡大であるとする。まず\mathbb{Q}_f/\mathbb{Q} n次拡大である事により、命題2より\mathbb{Q}_f=\mathbb{Q} (\alpha )=\mathbb{Q} [\alpha ](最後のイコールは\alpha \mathbb{Q}上代数的であることによる(p.288 定理5.3 前半*3))。命題1より|{\rm Gal} (\mathbb{Q}_f/\mathbb{Q} )|=[\mathbb{Q}_f:\mathbb{Q} ]=nであるから、{\rm Gal} (\mathbb{Q}_f/\mathbb{Q} )=\{{\rm id}_{\mathbb{Q}_f},\sigma,\cdots,\sigma^{n-1}\}と書ける。

 

\sigma (\alpha )\alpha の共役であることからあるiがあって\sigma (\alpha )=\alpha _iとなる。\alpha _i=\sigma (\alpha )\in \mathbb{Q}_f は、\mathbb{Q}_f=\mathbb{Q} [\alpha ]より、あるp\in \mathbb{Q}[x]を用いて\alpha _i=p(\alpha)と書けることがわかる。

 

このとき、必要に応じて添え字を付け変えて、\alpha _{k}:=\sigma ^k(\alpha )(k=1,\cdots ,n-1)と書くことにすると、

\alpha _k=\sigma ^k(\alpha )

=\sigma ^{k-1}(p(\alpha ))

=\sigma ^{k-2}(p(\sigma (\alpha )))

=\sigma ^{k-2}(p^{(2)}(\alpha ))

=\cdots =p^{(k)}(\alpha )

であるので示された。

 

次に逆を示す。まず仮定より \mathbb{Q}_f=\mathbb{Q} (\alpha )であるから命題2より[\mathbb{Q}_f:\mathbb{Q} ]=nが言えるので命題1と合わせると、|{\rm Gal} (\mathbb{Q}_f/\mathbb{Q} )|=[\mathbb{Q}_f:\mathbb{Q} ]=nを得る。fが既約であることから{\rm Gal} (\mathbb{Q}_f/\mathbb{Q})は任意の二つの根を選んだとき、一方を他方へ移す元を必ず含んでいる(p.292 定理5.5*4 )。従ってある\tau \in {\rm Gal} (\mathbb{Q}_f/\mathbb{Q} )があってp(\alpha )=\alpha_1=\tau (\alpha )となる。このとき\tau ^k (\alpha )=p^{(k)}(\alpha )=\alpha_{k}(k=1,\cdots ,n-1)となり、\alpha をその共役へ移す同型がn個全て得られたので*5{\rm Gal} (\mathbb{Q}_f/\mathbb{Q} )の元はこれで全てである(詳しく言うなら\{{\rm id}_{\mathbb{Q}_f},\tau,\cdots,\tau^{n-1}\}\subset {\rm Gal} (\mathbb{Q}_f/\mathbb{Q} )がわかり、最初に述べたように|{\rm Gal} (\mathbb{Q}_f/\mathbb{Q} )|=nあるから{\rm Gal} (\mathbb{Q}_f/\mathbb{Q} )=\{{\rm id}_{\mathbb{Q}_f},\tau,\cdots,\tau^{n-1}\} とならねばならない、ということである)。従って示された。

証明終了

 

系も示すのであった。

[系]
f\in \mathbb{Q} [x]\alpha =\alpha _0,\cdots,\alpha _{p-1} を解に持つ既約p多項式とする(p素数)。このとき以下は同値である     
(a) {\rm Gal} (\mathbb{Q}_f/\mathbb{Q} )\cong \mathbb{Z}/p\mathbb{Z}
(b) fは巡回多項式
(c) fのある根\alphaを用いて\mathbb{Q}_f=\mathbb{Q}(\alpha)と書ける

証明

(a)\Rightarrow (b)は主定理から従い、(b)\Rightarrow (c)は自明なので(c)\Rightarrow (a)のみ証明すればよい。

(c)が成り立っているとすると、命題2より[\mathbb{Q}_f:\mathbb{Q} ]=pであるから、これと命題1を合わせると|{\rm Gal} (\mathbb{Q}_f/\mathbb{Q} )|=[\mathbb{Q}_f:\mathbb{Q} ]=pがわかり、ここから直ちに(a)が従う*6

証明終了

 

 

冒頭の例を考えてみる

まずは冒頭の問題について主定理を当てはめてみる。f(x)=x^3+x^2-2x-1とする。 {\rm Gal} (\mathbb{Q}_f/\mathbb{Q})が三次の巡回群であることを確認すればよいのだが、これは問題の内容から明らかである(これでわからない読者は恐らく説明されてもわからないだろうし、説明されて分かる読者は説明せずともはずであるから説明の必要はないのである。p.322の例と全く同じである)。

 

逆にガロア群が巡回群である多項式を持ってきてそれが巡回多項式となる例も見たい。そのためには次の節の内容が必要であるので、そこで例を出そう。

 

巡回関数の計算 

さて二つ目の主題である。これは\mathbb{Q}(\alpha)上での因数分解が与えられれば解決することはすぐにわかる(\alphafの根)。

 

ちょうどその方法をここに書いたのでまずこれを読んでほしい。

period-mathematics.hatenablog.com

計算にはPARI/GPというものを使う。Androidならスマホアプリもあるので非常に便利である。

 

さてでは冒頭の例f(x)=x^3+x^2-2x-1の巡回関数を求めてみよう。

まずはf(x)=x^3+x^2-2x-1\mathbb{Q}(\alpha)上で因数分解すると(x-\alpha)(x + (-\alpha^2 + 2))(x + (\alpha^2 + \alpha - 1))となる

 

コマンドと計算の様子は以下のようになる

 

コマンド

gp > f(x)=x^3+x^2-2*x-1

gp > lift(factornf(f(x),f(a)))

 

計算画面

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よってp_1(x)=x^2-2, p_2(x)=-x^2-x+1のどちらかが巡回関数だとわかる。

ここで主定理の証明を見ると納得されると思うが、生成元となる多項式を引く確率は1からn-1までの中でnと互いに素な数の個数を引く確率であるので\phi(n)/(n-1)である。特にn素数の時はどれを選んでもよい。今はn=3であるからどちらも巡回関数である。

 

ここで問題文に与えられていたG(x)=-1/(x+1)と形が違うと思うかもしれない。しかしこれは見かけが違うだけで本質的には*7同じである。というのもG(\alpha)=p_1(\alpha)なのである。これは簡単に確かめられるがPARI/GPでは以下のように確かめられる。

 

gp > a=Mod(a,f(a))

gp > lift(-1/(a+1))
%4 = a^2 - 2

 

よってどちらの表現を使ってもいいわけであるがGは既に問題で確かめられているのでp_1の方を確かめよう。その前に、念のためここまでをやった計算画面を以下に示す。

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さて確かめる内容はp_1(p_1(\alpha))=p_2(\alpha),p_1(p_1(p_1(\alpha)))=\alphaである。これは単なる計算なのでコマンドと計算画面だけ置いておこう。

 

コマンド

gp > p_1(x)=x^2-2
gp > lift(p_1(p_1(a)))
gp > lift(p_1(p_1(p_1(a))))

 

計算画面

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%6の結果でp_2(\alpha)が、%7の結果で\alphaがしっかり出ていることがわかるだろうか?これはそれぞれp_1(p_1(\alpha))=p_2(\alpha),p_1(p_1(p_1(\alpha)))=\alphaを表しており、従ってp_1が巡回関数であることが確かめられたのである!

 

p_2も巡回関数であったのでこっちを選んでも同様の結果が出るはずである。ここではあえて計算画面などを出さないので、読者自ら計算を試みられてほしい。PARI/GPの慣れにも、状況把握にも役立つはずである。

 

巡回関数の計算2(冒頭の問題以外の多項式の考察)

 

ここでは冒頭の入試問題以外の例も少し計算してみることにする。

 

まずは始めで予告したf(x)=x^5+x^4-4x^3-3x^2+3x+1について考察しよう。これについては既にそこに

f(x)=(x - \alpha)(x + (-\alpha^2 + 2))(x + (-\alpha^3 + 3\alpha))(x + (-\alpha^4 + 4\alpha^2 - 2))(x + (\alpha^4 + \alpha^3 - 3\alpha^2 - 2\alpha + 1))

という分解が計算されているので[系]より巡回多項式だったっわけであるが、これが巡回多項式であるかを確かめてみよう。

 

n=5素数であるからどれを選んでもよいので、例えばp(x)=x^4-4x^2+2を選んでみよう。計算結果だけ載せると以下のようになる(画像では(面倒だったので)liftをかましていないがもちろんかました方が見やすくきれいな見た目になる)。

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しっかり巡回して最後にはもとに戻っていることがわかる。他の三通りも試されたい。冒頭の問題のように分数表示をすることも出来よう(例えばx^2-2の分数表示は1/(x^4-3x^2+x)であることがわかる)。 

 

他にもいろいろと計算できるはずである。沢山遊んでみてほしい。筆者にはその余裕が無いので今はこうしてその土壌を整えることに集中した。そして何か面白いことをどんどん見出していってみてほしい。

 

 巡回多項式はどのように見つけ出せるか

 

実は三次多項式$f$に対しては,その判別式を$D$としたとき「\sqrt{D}有理数\iff fガロア群は巡回群」という定理があるので\sqrt{D}有理数であるとき,またそのときに限って$f$は巡回多項式です.$D$の公式はネットで検索すれば色々出てくるでしょうからPari/GPと合わせて色々計算を楽しんでみてください.

あとがき

中学生のときだったか高校生のときだったか、興味を引くページhttp://shochandas.xsrv.jp/solution/solution3.htmを見つけた。x^3-3x+1=0という見慣れた方程式が始めの方にあり、「またこれか」と思って読み進めていくとどんどん見覚えのない記述が目に飛び込んできた。

 

てっきりこれは解が三角関数で表せるという、とても特殊な状況の中でもさらにたまたま起こるような現象だとばかり思っていたがそこには一般の異なる3つの実数解を持つ3次方程式に対してなんと公式まで与えられていた*8。これには驚きどのようにして導出したかの解明に取り掛かるも当時の自分には2次が関の山であった。

 

またそのあとには4次の場合などより高次の場合が続いていた。必要十分条件や完全な公式は与えられていなかったが、読み進めるにつれて「ガロア理論」というワードが飛び交うようになっていた。それが恐らくキーなのだろうということは分かりつつも誰も決定打を与えられていなかったような雰囲気であった(ただ一人、大学教員と思われる人は完全にわかっていたようであるが)。

 

月日が流れ、ガロア理論を少しやり終えてからしばらくして、この話題を思い出し、かねてから気になっていた主定理の証明と巡回関数を求める方法を見出すことの二点に成功したのがちょうど去年の三月頃であった。

 

この問題について考えているサイトをよく見かけたが、ガロア理論が関係していることは勘づいている人は少なくなかったようだが、ガロア理論をちゃんと知らないため結局はそのキーワードを出すにとどまっているのがほとんどだった。ガロア理論を知らない人には到底記述できず、また知っている人は少し考えればわかることなのであえてしっかりとした回答を残さなかったのだろうという想像がつく。一番ましに思えたのがhttp://suseum.jp/gq/question/2733であった。

 

恐らく、少なくとも日本語の文献では、この現象に完全な解答を与えた文献は本稿が初めてなのではないのだろうかと思う。もしそうなら書いたかいがあったというものである。そうでなくとも昔抱いた疑問を完全に解決できたというだけでも嬉しいものである。解決当時も、計算の最後にしっかり「a」と出てきてくれたときは喜びに打ちひしがれた。

 

後半の計算パートはガロア理論がわかっている人も楽しめるのではないかと思う。ガロア理論を知らない人でもここで雰囲気だけでもつかむことは出来るかもしれない(念のため、この記事+傍らの本だけではガロア理論はまだわからないと思う(わかるきっかけにはなるかもしれないが)。本当にガロア理論を理解したいのなら啓蒙書ばかり読んでなんとなく分かった気にならずに必ずちゃんとした本を一冊手元に置いて、証明をしっかり追って勉強するのを強くお勧めする。例えば本記事で引用した石井俊全さんの本は良いと思う。\mathbb{Q}上の方程式のガロア理論に終始しているため単拡大定理を駆使してとっつきやすい内容となっている。基本定理の証明も単拡大ならではのオリジナリティのあるものであると思う)。

 

最初に宣言した通り証明も本当に丁寧に書いたので、少なくともガロア理論の本をある程度読んだことのある読者なら、時間をかければ必ず理解できると思う。そうでない読者も根気強くちゃんとした本にある程度時間をかければ、本稿を読み通すことができるようになっていると思う。一人でも多くの人がガロア理論の威力を体感出来たらそれは筆者の喜びである。

 

*1:以下の議論において\mathbb{Q}を全て標数0の体Fで置き換えることでF上の多項式に対しても全く同様の結果が成り立つ。

*2:ガロア群が5次の巡回群であることも直接PARI/GPを用いて確認することもできる(これは

多項式のガロア群の計算~PARI/GP入門~ - Period-Mathematics

にて紹介している)

*3:本には\mathbb{Q}(\alpha)と書いてあるが正しくは\mathbb{Q}[\alpha]である。\mathbb{Q}[\alpha]が体であることがわかって初めて\mathbb{Q}[\alpha]=\mathbb{Q}(\alpha)がわかる、という寸法である

*4:正確にはこの定理の同型、では正しくない。しっかり\mathbb{Q}_fの自己同型にしなければならず、その場合同型を拡張する必要がある。これを正確に扱っているのは雪江明彦『代数学2 環と体とガロア理論』の命題4.1.11である。が、しかし初学者は今の段階では特に気にせずその同型が{\rm Gal} (\mathbb{Q}_f/\mathbb{Q})の元であると(不正確ではあるが)思って構わないだろう

*5:p.301 定理5.10の理屈である

*6:素数位数の群は巡回群しかないという有名な事実が効いており、これがこの証明のキーである

*7:正確には\mathbb{Q}[x]/(f(x) )の元として

*8:参考:既約な三次多項式はそれが巡回多項式なら三つの実数解を持つ。逆は成り立たない(例えばx^3-7x^2+3x+2