Period-Mathematics

有理対称式の基本定理をガロア理論で示す

Kを体、x_{1}, \dots, x_{n}を(相異なる)変数、s_k   (k=1,\cdots,n)x_{1}, \cdots, x_{n} k次基本対称式とする。

本稿で示したい定理は以下である。

[定理]
有理対称式は基本対称式の有理式で表せる

通常の対称式の基本定理と呼ばれるものは対称「多項式」に関するもので、表現の一意性までを含めて主張している。今回扱うのは有理対称式である(ヒルベルトの零点定理を使えばこの定理から通常の対称式の基本定理を導けることが出来る(アルティンガロア理論入門』2章7節例2))。定義は自然なものであるが、ちゃんとした説明は最初の節を見られたい。

これは以下の補題を認めればガロアの基本定理よりF=L^ {{\rm Gal}(L/F)}=L^{S_n}=(有理対称式全体)であるから主張が従う。

よってこの補題を示せばよい。以下K上のn変数有理関数体をL=K (x_{1}, \dots, x_{n} )F=K (s_{1}, \cdots, s_{n} ) とする。補題の主張は {\rm Gal}(L/F)\cong S_nである。

有理対称式の定義

\sigma \in S_n に対してLK自己同型\sigma^{*}

\sigma^{*} (f (x_{1}, \ldots, x_{n} ) )=f (x_{\sigma(1)}, \ldots, x_{\sigma(n)} )

と定めることにより\sigma は以下のような単射準同型を引き起こす。

S_{n} \ni \sigma \mapsto \sigma^{*} \in \operatorname{Aut}(L / K)

これにより\sigma \sigma^{*} を同一視することでS_n < {\rm Aut}(L/K)とみなせる(<は部分群の意味)。こうしたときに有理対称式f\in Lとは任意の\sigma\in S_nに対して\sigma (f)=fを満たすものとして定義できる。

本題の証明

補題を示せばよいのであった。
補題の証明
さてLF上の分離多項式t^{n}-s_{1} t^{n-1}+\cdots+(-1)^{n-1} s_{n-1} t+(-1)^{n} s_{n}の最小分解体であるためL/Kガロア拡大である*1

ここでS_nFを不変にするので {\rm Gal}(L/F)\cong S_nがわかる。
証明終了

*1:有限次拡大L/Kガロア拡大であることとLがあるK上の分離多項式の最小分解体であることと同値である(コックス『ガロワ理論 上』p.171 定理7.1.1)